研究データのファイル名を「aaa」のように雑に名付けている人はいませんか?
“今の”あなたは,このファイルの中身がすぐにわかるでしょう.
しかし,“数年後のあなた”はファイルの中身がすぐにわかるのでしょうか.
卒業してから数年後,研究室の先生や学生から研究データについて問い合わせがある例は少なくありません.
院生になってから,卒論の成果を学会発表に使うことだって頻繁にあります.
この記事では,手っ取り早くファイルを整理する手順を徹底的に解説します!
なぜファイル整理をする必要があるの?
研究データを整理するべき究極の理由は時間の節約です.
ファイルの名前を’aaa’などと適当に名付けた場合,間違って関係ない場所に移動させてしまったり,削除してしまう可能性がとても高いです.
せっかく時間をかけてまとめたデータを失った場合,それらを再びまとめ直すのに膨大な時間がかかってしまいます.
修士になってから,卒論の成果を学会発表に使うことは多々あります.
その時,必要なデータがなかった場合の時間のロス,精神的ダメージは計り知れません.
あなたがもうすぐ大学を去る場合にはさらに要注意です.
卒業してから数年後に,研究室の指導教員から「あの研究を論文にしないか」とお誘いを受けるケースがよくあります.
私は,博士課程の時に,卒業してから5年経つ社会人と共に論文を書いて,海外の雑誌に投稿しました.
その人はファイルをとても上手に整理していたので,必要なデータをすぐに私に渡してくれました.
先生から「あのデータをくれ」と連絡が来た時に,必要なデータをすぐに見つけ,先生や先輩に渡すことができますか?
「あれ,あのデータはどこだ?」となれば一大事です.
卒論や修論の記憶も薄れているでしょうから,データの復旧には膨大な時間がかかります.
データを再びまとめ直すのに必要なソフトウェアが手元にないかもしれません.
この記事で紹介する方法でデータを整理すれば,何年経っても安心です.
データの量にもよりますが,1時間もあれば完璧に終えることができるでしょう.
私自身の失敗経験と試行錯誤の末に生まれた
究極のファイル整理術を伝授します!
フォルダの構造/階層をイメージせよ
フォルダの構造?階層?なにそれと思った方もいることでしょう.
一度,下の写真をみてください.
まず,“レポート”という名前のフォルダを開くと,その中に“物理学入門”,“線形代数学A”,“プログラミング入門”,“化学実験”という4つのフォルダがあります.
さらに“化学実験”を開くと“水の硬度測定”,“陽イオン分析”,“フェノールフタレインの合成”という3つのフォルダがあります.
これらのフォルダの関連を図でまとめると下のようになります.
上の図のような,フォルダ( = ディレクトリ)とファイル達の構成のことをファイル/フォルダの”構造”と言います.
また,階層は構造の中にある同じレベルのファイルやフォルダのまとまりを指します.
階層は浅いとか深いとかで表現されることが多く,階層1→階層2と数字が大きくなるほど,その階層はより深くなっていきます.
このようなファイルの構造や階層をどのような構成にするのか,ある程度考えてから研究データの整理を始めた方が効率が良いでしょう.
オススメのファイル構造
ファイル構造/階層を作り上げるために重要なポイントは,
- 同じ種類のデータはまとめる
- なるべく階層は浅く仕上げる
理系の皆さんが一般的に使えるであろうオススメのファイル構造をお見せします.
※ファイル名は日本語にしていますが,なるべく英語にすることをお勧めします(理由は後で).
「研究」
まずは「研究」というフォルダを作成してください.
ここに研究に関連するすべてのファイルを入れます.
もし,研究室内のサーバーなどにファイルを置く場合は,「研究」ではなく,「田中太郎_2021」のような名前の方が良いかもしれません.
研究に関するデータをすべて移動したり,コピーしたりする必要が生じた場合は,この「研究」というフォルダだけをコピーすれば良いのです.
「実験」
次に「実験」というフォルダを作り「研究」の中に入れてください.
実験ではなくシミュレーションの場合は「シミュレーション」でも良いかもしれません.
自身の状況に合わせた名前をつけてください.
この中に,実験に関する生データのテキストファイルや解析の際に作ったエクセルファイルなどのすべてを入れます.
複数の種類の実験を行う場合は,それぞれの実験名をつけたフォルダを作成してください.
今回は,「X線回折」「強度試験」という二種類の実験を例にフォルダを作成しました.
次に「X線回折」の中には,「日付_X線回折」というフォルダを作成し,その日に実験した際に得たデータやそれを解析したファイルのすべてを入れます.
「論文」
「論文」というフォルダを作成し,「研究」の中に入れてください.
この中には,卒論や修論などに関する文章ファイルをすべて入れます.
卒論や修論,他の学術論文などに分ける必要がある場合は,「卒論」「修論」「論文のジャーナル名」などのフォルダを作成し,「論文」の中に入れます.
卒論や修論は何回も書き直したり,先生に見てもらったりするでしょうから,バージョンを区別するために「日付_卒論」という名前で文章ファイルを保存しましょう.
完成版は特に重要ですから,完成後は完成版の文章ファイルとpdfファイルを保存しておきましょう.
「プレゼンテーション」
「プレゼンテーション」の中には,「卒論発表」「修論発表」「研究ミーティング」「学会発表」などのフォルダを作成し,入れます.
発表に関係する資料をすべて保存します.
「研究ミーティング」を例にとれば,「日付_研究ミーティング」と名前をつけて区別できるようにしましょう.
「その他」
使用頻度が少なかったり,ジャンル分けする必要がないファイルは「その他」に保存します.
例えば,研究室旅行に関するファイルや学内で共用する機器の利用申請書ファイル等です.
ここまでで,同じ種類のファイルをまとめることができました.
見本通りにした場合,階層は5となります.
階層を深くするとそれはそれで不便なので,階層は5が上限でしょう.
ファイルの命名ルール
日付 + 個別ネーム
まず,ファイルの名前は基本的に「日付_実験名」や「日付_卒論」など日付_個別ネームにしましょう.
_ はアンダースコアと呼びます.
先頭に日付をつけることによって,基本的にファイルの順番は自動で古い順に並ぶことになります.
この時,ファイルの表示は名前順になるようにパソコンで設定してください.
日付は,”220108″のように西暦の下2桁+月+日にしましょう.
2022年1月8日の場合は,220108,2022年12月25日の場合は,221225です.
また,日付だけだと,何に関するファイル/フォルダかわからなくなるので,必ず個別のネームを端的にしたものをつけましょう.
卒業論文の場合は,「220108_卒論」というような感じです.
また,文字同士を区切る記号にはアンダースコア(_)もしくはハイフン(-)を使いましょう.
スペースやピリオド(.)は絶対にやめましょう.
古いパソコンであればスペースはバグの原因になりますし,ピリオドをつければ,ピリオド以降が拡張子とみなされてしまい,最悪の場合ファイルが破損する場合があります.
英語で名付ける
例えば,今あなたはプレゼンテーションに関するファイルを探していたとします.
この時,ある階層にはフォルダとして「実験」「その他」「プレゼンテーション」「論文」の4つあるとしましょう.
この時,フォルダ名が日本語で名付けられていた場合「プレゼンテーション」というところまでマウスカーソルを持っていき,フォルダを開く必要があります.
一方で,英語で名付けられていた場合,Pのキーを押せば,Presentationが選択され,そのままMacならCommand + O,WindowsならCotrol + Oを押せばフォルダを開くことができます.
「Presentation」と「Publication」がある場合,PとRを連続で素早く押せば「Predentation」が選択されます.
このようにマウスを使わずにフォルダをすぐ開けるのは,わずかですが時間と手間の節約になります.
“塵も積もれば山となる”で,あなたの研究において大きな時間と労力の節約になります.
余った時間で研究の方針などに想いを馳せることも可能になるでしょう.
この機能(Focus機能)を使うために,ファイルの名前は英語がオススメです.
もう一つ,日本語名のファイルはファイルを移動した際に文字化けしたりする事故が起こる可能性もあるためです.
長期間触らない研究データには簡単なメモを置いておこう
もし,あなたが卒業や修了を迎え「この研究データには,数年,いやもしかすると一生触らないかもしれない」と考えるなら,各実験データと同じフォルダに「その研究の簡単な説明」を書いたテキストファイルをおいておきましょう.
Wordファイルでも良いです.
以下に例を示します.
「一生触らないかもしれない」と思っても,実践してください.
意外にも数年後に触る機会が来たりするんです.
例のように,その実験の詳細が書いてある実験ノートのページや,解析に関するメモ,注意点などをメモしておけば,数年経って忘れた頃に先生から「論文にしよう!」などの誘いが来ても,そのデータに関する記憶をすぐに呼び戻せます.
バックアップを取ろう
あなたの研究データはとても重要なものです.
研究データは学術的にも大事ですが,大学の授業の一つである,という観点からも重要です.
研究データは,あなたが卒業論文にしっかりと取り組んだ証拠でもあるのです.
そのような理由から,ファイルのコピー(バックアップ)をとることを強くお勧めします.
パソコンの中に保存しておいただけでは,急な落雷や落とした衝撃で消えてしまう可能性があります.
もし研究室にファイルサーバーがあれば,そこに確実に保存しましょう.
最近は,1TBの外付けHDDが数千円で手に入る時代です.
個人でも一つ安いHDDで良いので購入し,そこにもコピーをとって,自分で保存しておきましょう.
私は,ウェスタンディジタル,WDのハードディスクに保存し,ケースに入れています.
WDのハードディスクは品質が良く,データの長期保存に向いています.
↓実際に私が使っていて,お勧めできるHDDとケースです↓
まとめ
今回は,ファイルの整理に関してその重要性と詳しい整理方法を説明しました.
ここまで読んでくださった皆さんなら,なんとなくファイルの整理って大事そうだな,と理解してもらえたと思います.
とはいえ,整理は面倒臭いのはわかります.
でも,数年後,迷子のファイルを探し出したり,再びまとめる方がもっと大変です.
この記事を読んだ,今がラストチャンスです.
今から1時間で終わらせてコーヒーブレイクにしましょう.
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